Branding a city、つまり都市をブランド化するプロセスは、一般的な製品やサービスとは異なり、考慮すべき範囲が非常に広くなります。環境、資源、歴史的建造物といった目に見える有形の資産だけでなく、文化・経済・人といった、複雑で多様な無形の価値も含まれます。これらの要素が組み合わさることで、その都市の本質と唯一無二の姿が決まっていくのです。
ブランドが自分自身の物語と個性を築くには、戦略、デザイン、ターゲット、市場を通じて作り上げていく必要があります。これはまさに、私たち隅室デザインスタジオが日々行っているブランドストーリー化の仕事そのものです。
都市がブランドを築くこともまた、非常に長い時間を要するプロセスであり、なおかつ戦略的にサステナブルに運営していく必要があります。たとえばコペンハーゲンのカルチャーナイトは、文化的な催しを都市本来の風景の中に溶け込ませることで、歴史的建造物をただ受動的に保存するだけでなく、積極的に新しい記憶を生み出す場所へと変えています。
カルチャーナイトは、コペンハーゲンで毎年秋の始まりに行われるイベントです。普段は内部を見学できないオペラハウス、教会、下水道といった場所が、その夜だけ真夜中まで一般に開放されます。デンマーク人にとっては秋休みの始まりとも見なされていて、人々は夜の街に繰り出し、さまざまな講演、ツアー、演劇を体験しながら、都市全体を探索します。
画像出典:Martin Gaffron、Kulturnatten — Kulturnatten 🌆 都市ブランディングにはどんなステップがあるのか?
都市全体を包括できるブランドを、どうやって作り上げればよいのでしょうか。ビジュアルイメージを通じて、ある場所を経済的にも文化的にも魅力あるものにするのは簡単なことではありません。一見矛盾するようなことを同時に実現しなければなりません——明確でありながら繊細であること、普遍的でありながら独自であること、住民に帰属意識を持たせながらも世界に向けた魅力を持つこと——そのうえで、時間の試練にも耐えられなければならないのです。
▪️ リサーチと分析:
都市の歴史、文化、経済的背景、社会構造などを含み、さらにターゲットとなる人々——住民、旅行者、投資家など、異なる層のニーズや期待——についても理解する必要があります。
▪️ ブランドポジショニングとコアバリュー:
リサーチの結果に基づき、その都市のための明確なブランドポジショニングを定め、都市ブランドのコアバリューをはっきりさせます。つまり、文化遺産、自然景観、経済的機会など、その都市を他と際立たせる特質のことです。コアバリューは都市の長期的な目標と一致していなければならず、感情的な共鳴を呼び起こせるものでなければなりません。
▪️ ブランドイメージデザイン:
ブランドイメージデザインには、都市のビジュアルアイデンティティ(ロゴ、カラースキーム、フォントなど)やスローガンの制作が含まれます。これらの要素は一般的なデザイン原則に沿ったものであるべきで、都市のコアバリューを簡潔かつ的確に表現できると同時に、ブランドの長期的な適用性やさまざまな使用シーンを考慮し、あらゆるメディアやプラットフォームで効果的に伝わるようにする必要があります。
▪️ コミュニケーションとプロモーション:
ブランドイメージデザインが完成した後は、ブランドのコミュニケーションとプロモーションを行うことが非常に重要になります。これには、地元および国際市場での広告宣伝、広報活動、SNSでのプロモーションなどが含まれます。プロモーション戦略は異なるターゲット層に合わせてカスタマイズし、ブランドメッセージがあらゆる層の人々に効果的に届くようにするべきです。
▪️ コミュニティの参加と協働:
ブランディングのプロセスにおいて、コミュニティの参加は見過ごせない部分です。地元住民、企業、文化機関との協働を通じて、コミュニティのメンバーが自分たちもブランドの一部であると感じられるようにすることで、ブランドへの受容度と共感を高めることができます。
▪️ ブランド管理と継続的な最適化:
ブランディングは一度きりの作業ではなく、継続的なブランド管理と最適化が非常に重要です。都市ブランドは定期的に評価を行い、都市の発展や変化を引き続き効果的に反映できているかを確認する必要があります。もしブランドと都市の実態がかけ離れてしまった場合は、適切なタイミングで調整や再定義を行う必要があります。
💫 ニュージーランド・クライストチャーチ Christchurch Ōtautahi の事例
ニュージーランドのクライストチャーチが2023年に発表した新しいアイデンティティは、2011年の地震で大部分のインフラが破壊された後、復興の過程でクライストチャーチが自分たち自身の新しいアイデンティティを見出す必要に迫られたことから生まれました。
復興計画では、都市をŌtākaro Avon川周辺に再び位置づけました。マオリ文化において、川(awa)は命を支える強大な力として捉えられており、コミュニケーション、交易、交通における重要な経路でもあります。
画像出典:ChristchurchNZ Toolkit Resonance Consultancyは経済発展機関であるChristchurchNZと協力し、長い時間をかけてこの都市の「魂」を掘り起こし、数千の企業、住民、旅行者を対象に、クライストチャーチに対する期待や見方についての調査を行いました。その結果、「ガーデンシティ Garden City」(注1)というイメージが非常に重要であることがわかり、また多くの人が、この街を仕事と余暇のバランスが取れた良い場所だと感じていることも見えてきました。これが「クライストチャーチは人々の遊び場である」というポジショニングにつながりました。
この都市は、古いものと新しいもの、仕事と娯楽、自然と建築、マオリとヨーロッパの遺産のバランスを取っています。ガーデンシティというイメージは、これからも都市アイデンティティの一部であり続けますが、この新しい物語はそのコンセプトのうえに築かれ、「Balance(バランス)」というコアバリューを中心に据えることで、より現代的な新しい都市像を映し出しています——それは、人々がバランスを求め、遊びのための時間と空間を生み出す場所です。
画像出典:It's Nice That 「人々に愛される都市の象徴を作るときは、人々がすでに愛し、慣れ親しんでいるものから出発しなければならない。」
地元コミュニティから意見を求める協働的なアプローチは、都市ブランディングにおいて非常に重要です。Resonance Consultancyの戦略担当副社長Jeremie氏はこう述べています。「あなたのブランドストーリーは、コミュニティが共有する価値観と一致し、彼らの現実を反映していなければならない」。認識しやすさも都市ブランドデザインにおけるもうひとつの重要な要素であり、「見慣れている」と感じさせる必要がある一方で、ランドマークや歴史上の人物といった、いかにも安易な代替表現は避けなければなりません。
新しいロゴは、都市名のバイリンガル表記を組み合わせたものです。ŌtautahiとChristchurch、それぞれの頭文字である「O」と「C」を組み合わせることで、この場所の物語を象徴しています。二本の線は、whakairo(マオリの彫刻技術)における「haehae」という技法へのオマージュであり、同時にエイヴォン川の両岸の対立と、この都市の二面性——バランスを追い求める都市であり、遊び場であり、マオリとヨーロッパ両方の遺産を持つ都市であること——も象徴しています。市民にとって、これらのマークは単なる記号ではなく、一種の行動への呼びかけでもあるのです。
画像出典:Resonance Consultancy公式サイト まとめ
これまでの経験から言えば、どんな企業にとってもリブランディングは大変な取り組みです。組織内部では上から下まであらゆる関係者へのヒアリングが必要であり、対外的には既存顧客がブランドに対して抱いている感覚や期待を見過ごすこともできません。都市がブランドを築く場合は、異なる属性、異なる年齢層、さらには異なる時代背景といった要因まで考慮する必要があり、さらに複雑です。それほど難しいのに、なぜそれでもやる必要があるのでしょうか。
都市ブランディングは、経済面・文化面での魅力向上に間違いなく重要な役割を果たします。市民の間に共通のアイデンティティを育むだけでなく、グローバル化の舞台で都市が際立つことを可能にし、地域経済の発展と国際的な知名度の向上を後押しします。では、どのようなものが「成功した都市アイデンティティ」と言えるのでしょうか。
たとえば誰もが知っているニューヨーク市の「I ❤ NY」は、タイムズスクエアの土産物店のいたるところで見かけるほど浸透しています。世界的に知られるシンボルとなっただけでなく、数百万人もの旅行者や投資家を呼び込むことに成功しました。このようなブランドの力は、売上の数字に直接反映されるだけでなく、都市に長期的な財政的安定の土台をもたらしてもいます。
画像出典:Viviane Moos/Corbis via Getty Images 文化的な観点から見ると、都市ブランディングは、その都市ならではの文化遺産を際立たせ、広めていくのに役立ち、市民のアイデンティティ意識を強めます。ブランディングを通じて、都市は自分自身の物語を語ることができ、外部の人々がその都市をより深く理解し、魅力を感じられるようになります。たとえばクライストチャーチの「ガーデンシティ」や、パリの「ロマンスの都」のように。都市ブランディングは単なる視覚的なシンボルにとどまらず、戦略が適切に用いられれば、経済発展を後押しするだけでなく、都市の文化的な地位をも強固なものにできます。皆さんはどう思いますか?
注1:クライストチャーチには数多くの公園や個人の庭園があり、さらにどの家庭も木を植えていることから、「ガーデンシティ Garden City」という愛称で知られています。